ガルダ湖の魅力の一つは、豊潤でいて切れ味のよい白ワインの宝庫であるということ。湖の少しばかり南に広がる大地にルガーナ、そしてソアーヴェというところがあり、いくつものワイナリーが点在している。もう少し西側にあるフランチャコルタを含めると、イタリアでも他にない白ワインの聖地なのである。
ワイナリー選びは、あまり前評判や事前勉強をせずにひょっこりとその地、その蔵を訪れてそこの蔵人と交わるというのが自分なりのやり方である。もちろん当たりがあれば外れもある。しかし人と知り合い、人を知ることがそこで生きながらえてきたワインを知ることにもなる。「これは凄い!」というものに当たった時は目を見開くことになるが、何も結果だけがすべてではない。ふれあいの中で知る、たとえば作り手の苦労話やはたまたワインづくりをはじめた源流にまで辿り着ければかなりの収穫であり、その環境で生まれた無二の味こそ至宝なのである。
ガルダ湖は何もシルミオーネだけではない。そこを最南端として、最も北のリーヴァ・デル・ガルダまでおおよそ75kmの間にはいくつもの素敵な町や村がある。二等辺三角形の底辺の中央に突き出した半島がシルミオーネであり、もっとも角度のない頂点がリーヴァということになるので、西から回り込んでも東から頂点を目指してもどちらからでも辿り着けるのである。北上するに従って標高が高くなるので、自然を映すそれぞれの景観も自ずと変わってくる。
コモ湖、ガルダ湖に比べて多少出遅れた感はあるものの、しかしこのところ立て続けに出掛けているのがミラノの北西にあるマジョーレ湖である。ここへ出向く目的は夏の音楽祭だ。
ストレーザという湖畔の町で毎年開かれていて、世界中から人々を集めている。トリノ王立歌劇場で音楽監督を務めるジャナンドレア・ノセダが、音楽祭の芸術監督としてけん引しながらフェスティバルの拡大を図ってきた。自然と芸術が巧みに交わり、美しい町に美しい音楽が溢れる夏のひと時は格別である。
この湖の見どころはやはり湖上に浮かぶ3つの島であろう。イゾラベッラ、イゾラマードレ、そしてイゾラペスカトーリ。その中でもイゾラベッラは何とも美しい。もともと「ベッラ」が美しいという意なので異論はないのだが、中世に栄えた大家、ボッロメーオ家の宮殿がその島のほとんどを占めている。もちろん庭園も美しいのだが、入場可能であるその宮殿は一見の価値があり、島の中に時代を封じ込めた玉手箱のような感覚がたまらない。
堂満尚樹(音楽ライター)

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