Films x Music 名作でめぐる音楽の旅 Vol.1 AMADEUS

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『AMADEUS』

発売中
販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
価格:¥1,429 +税

監督:
ミロス・フォアマン
出演:
F・マーリー・エイブラハム/トム・ハルス/エリザベス・ベリッジ他

あらすじ

1823年11月のある夜、ウィーンの街で自殺を図った老人が精神病院に運ばれた。彼はアントニオ・サリエリと名乗り、かつて皇帝ヨーゼフ2世に仕えた宮廷音楽家であると語った。やがて彼は神父に、驚くべき告白を始める―。
敬虔(けいけん)なクリスチャンであったサリエリは、若い頃、音楽への深い愛と共に生きていた。しかし、彼の前に天才作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが現れたことで人生が一変してしまう。神から与えられたようなモーツァルトの圧倒的な才能を前に、嫉妬や憎悪の念にとらわれるサリエリ。一方で、モーツァルトの才能を真に理解していたのもまた、サリエリだった。複雑な感情の中で苦悩するサリエリは、やがて恐るべき陰謀を企てるようになる…。

不朽の名作「AMADEUS」
神童・モーツァルトの生涯をひもとく旅へ

モーツァルトの名曲が彩るヒューマンドラマ

  • 王宮庭園のモーツァルト像
  • 聖マルクス墓地のモーツァルトの墓
  • モーツァルトクーゲル

“神童”と呼ばれ、35歳で短い生涯の幕を閉じるまで数多くの名作を生み出し続けた偉大な作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。映画『AMADEUS』は、モーツァルトの才能の陰で苦しみ続けたサリエリに焦点を当てることで、その天才性を顕著に描き出しています。

深い信仰心を持ち、実直に音楽と向き合ってきたサリエリにとって、モーツァルトとの出会いは衝撃的かつ最悪なものでした。下品な言動に、サリエリの音楽をばかにする態度、それでいて彼の音楽は“完璧”でした。敗北感、怒り、嫉妬…複雑に入り乱れた感情に支配され、モーツァルトに固執していくサリエリ。陰湿に出世を阻むものの、彼の作品の上演機会があれば必ず足を運び、その美しさに絶句する―。この複雑な人間模様は時代を超えて多くの人の共感を呼ぶのではないでしょうか。

劇中では、彼らの人間ドラマをモーツァルトの名曲が盛り上げます。冒頭で流れる《交響曲第25番》を皮切りに、クラヴィーア小品、大ミサ曲、ピアノ協奏曲など、幅広い作品が全編通して効果的に用いられ、その素晴らしさがまた、サリエリの複雑な感情を裏付ける説得力となっているのです。また、オペラ《後宮からの誘拐》《フィガロの結婚》《ドン・ジョヴァンニ》《魔笛》のハイライトシーンも劇中に登場するため、“作品の中で作品を鑑賞できる”という二重構造を楽しむことができます。

なんと言っても一番の見どころは、死の淵にいるモーツァルトが口述で作曲した《レクイエム》を、サリエリが代筆するシーンです。頭の中で既に完成している音列が止めどなくモーツァルトの口を突いて出て、サリエリがそれを急いで書き留めていきます。すると、まさに今筆記している音楽が流れ始め、その旋律の美しさに私たちもサリエリと一緒になって息をのむことになるでしょう。初めはモーツァルトの作曲速度に付いていけずパニック状態だったサリエリも次第にイメージをつかみ、音符を記す筆が止まりません。夢中になって共同作業を進めていく様子は、音楽を愛する二人が対立関係の次元を超え、純粋に創作に没頭しているようで胸に迫るものがあります。

結局、《レクイエム》は完成することなくモーツァルトは死んでしまいます。盛大に弔われると考えていたサリエリの想像に反し、モーツァルトは共同墓地におざなりに埋葬され、それ故にサリエリは、罪の意識にさいなまれながら残りの人生を生き続けることになりました。神から才能を与えられたモーツァルトと、才能を与えてくれなかった神を恨んだサリエリ。そのどちらも孤独を抱えた人生だったのかと思うと、非常に切ない結末です。

モーツァルトの生きた、音楽の都を巡る

  • ウィーン国立歌劇場
  • シェーンブルン宮殿
  • シュテファン寺院

映画の舞台は、モーツァルトが生きた18世紀のウィーンです。音楽を重んじたハプスブルク家の統治の下各地から音楽家が集まり活躍していました。ハプスブルク家といえば、15世紀にその礎を築いたマクシミリアン1世がウィーン少年合唱団や、ウィーン・フィルの前身ともいえるウィーン宮廷楽団を創始していたり、モーツァルトの時代に国政を取り仕切っていたマリア・テレジアとその息子ヨーゼフ2世が、グルックやサリエリを宮廷楽長に迎えてオペラ文化を定着させたりと、クラシック音楽の発展に寄与した功績は計り知れません。ウィーンには彼らの影響が今も色濃く残り、世界最高峰レベルの音楽が溢れる「音楽の都」であり続けています。

ここで、ウィーンで訪れたい3つの「音楽スポット」をご紹介します。
一つは「ウィーン国立歌劇場」。1869年に完成したとき、こけら落としでモーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》が上演されました。専属の歌手アンサンブルやウィーン国立バレエ団、ウィーン国立歌劇場管弦楽団を擁し、毎年9月1日~翌6月30日までのシーズン中にほぼ毎日、およそ300回ものオペラ・バレエ公演を行なっています。マチネ・ソワレともに開催されているので、滞在中のスケジュールに合わせて複数回訪れることもできるでしょう。また、有料のガイド・ツアーには日本語での実施回もあり、劇場の見学だけでなく、歴史や建築についての情報、オペラ上演の仕組みなども知ることができます。

次に、「ウィーン楽友協会」。前述のウィーン国立歌劇場管弦楽団からさらに選抜されたメンバーで構成されるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地です。毎年1月1日に行われ世界に配信されているウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートは、約一年前に抽選が行われるほどのプレミアで、まさにクラシック音楽界の頂点ともいえる場所です。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の公演チケットは会員制で一般的なルートで購入することはできませんが、他にも一流の音楽家による公演が日々行われていますので、必ずや満足できるプログラムと出会えるでしょう。なお、ホールは“黄金のホール”と呼ばれる大ホール「グロッサー・ザール」と、ブラームスの名を冠した小ホール「ブラームス・ザール」があり、どちらも直方体の形をしているのが特徴。天井や柱に華やかな装飾や装画が施され、建築物としての価値も見逃せないポイントです。

最後に、ウィーンのシンボルでもある「シュテファン大聖堂」。あらゆる時代で偉大な音楽家たちが足を運び、祈りを捧げてきた神聖な場所で、モーツァルトの結婚式と葬儀もこちらで行われました。かつてモーツァルトも副楽長に任命されたことがある、付属オーケストラ・合唱団があり、週末にはコンサートが開催されます。また、毎年モーツァルトの命日である12月5日には、彼の最期の作品となったレクイエムが演奏されています。教会ならではの豊かな音響の中、全身で音楽を感じられるスポットとして人気です。

ザッハ・トルテで楽しむウィーンの
カフェ文化

ウィーンでぜひ楽しみたいものに“カフェ文化”があります。私たちの生活に当たり前のように溶け込んでいる「カフェ(喫茶店)」ですが、実は発祥の地はウィーン。1683年にオスマン帝国との戦いの戦利品として大量のコーヒー豆を得て、それをスパイとして宮廷に雇われていたイスタンブール人が使い最初のカフェを開業したといわれています。それ以降、社交の場としてカフェ文化は世界に浸透していき、2011年にはウィーンのカフェ文化が無形文化遺産に登録されました。

カフェを訪れたら、コーヒーと相性のよいチョコレート菓子「ザッハ・トルテ」も併せて注文してはいかがでしょう。チョコレート味のバターケーキに杏のジャムを塗り、チョコレートと砂糖から成る糖衣というものでコーティングされたもので、コーヒーの香りに負けないずっしりと濃厚な味わいが特徴です。
ところで映画『AMADEUS』の中で、サリエリがチョコレートを楽しむシーンがしばしばありました。当時チョコレートは大変な高級品だったため、宮廷音楽家の身分はそれだけ高いものだったのだと分かります。サリエリが「ヴィーナスの乳首」なるスイーツをコンスタンツェに勧めるシーンがありますが、これはマロンペーストをホワイトチョコレートで包んだ、オーストリアの伝統菓子だそう。売っているお店を見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。

18世紀の情景を残す街・プラハ

  • プラハの街並み
  • (c) National Theatre Prague
    エステート劇場
  • (c) National Theatre Prague
    エステート劇場内部

最後に、プラハにおける『AMADEUS』ゆかりの地を紹介します。というのも、映画の舞台は先述のとおりウィーンですが、実は撮影はプラハを中心に行われたのです。これは同作品の監督ミロス・フォアマンがチェコスロヴァキア出身だったことに加え、プラハがウィーンと同じハプスブルク帝国の街であり、現在のウィーンよりも18世紀の情景を色濃く残していたことが影響しています。

劇中に登場する「エステート劇場」は、モーツァルトがオペラ《ドン・ジョヴァンニ》の初演を行なった場所です。ヨーロッパ内でも歴史的でとても美しい歌劇場の一つとして数えられています。
また、世界的傑作といわれるバロック建築とフランス式の庭園が魅力的な「ヴァルトシュテイン宮殿」も、ロケ地として使用されたスポットの一つ。コンサートホールとして利用されている大広間や、天井や壁面に描かれたフラスコ画、そして色とりどりの花が咲き誇る庭園も見応え十分です。宮殿内に入れるのは土日のみなので、ぜひスケジュールを合わせて訪れてみてください。

プラハ・ウィーンは芸術や音楽を愛する人々にとって、まさに聖地のような街。『AMADEUS』を鑑賞した後、映画の余韻に浸りながら現地を巡ってみてはいかがでしょうか?

他にも訪れたい音楽ツアーならではの
ウィーン、
プラハのみどころ

  • ウィーン王宮
  • ウィーン楽友協会
  • プラハ市民会館スメタナホール
  • プラハ聖ヴィート教会

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