Films x Music 名作でめぐる音楽の旅 Vol.6 25年目の弦楽四重奏

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『25年目の弦楽四重奏』

発売中
発売・販売元:KADOKAWA 角川書店
価格:3,800+税

監督・脚本・製作:ヤーロン・ジルバーマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン
クリストファー・ウォーケン
キャサリン・キーナー
マーク・イヴァニール
リラズ・チャリ 他

あらすじ

第一ヴァイオリンのダニエル、第二ヴァイオリンのロバート、ヴィオラのレイチェル、そしてチェロのピーターで結成された弦楽四重奏団「フーガ」。結成25周年を迎える前夜、パーキンソン病の告知を受けたピーターが、今期をもって楽団を引退したいと申し出る。これを機にメンバーがそれぞれ内に秘めていた憤りや嫉妬など、さまざまな感情が露呈し、完璧なカルテットが狂い始めてしまう。果たして最終楽章の幕は無事に上がるのか―。

『25年目の弦楽四重奏』感動のアンサンブルドラマを生んだNYを訪ねる

ベートーヴェンの楽曲に重なる「フーガ」の運命

素晴らしい弦楽四重奏を演奏するためには、一人一人の技術だけでなく、4つの音色の調和を追求していかなくてはなりません。結成25周年を迎えようとしている弦楽四重奏団「フーガ」は、冷徹なまでに正確な演奏で客を魅了する第一ヴァイオリンのダニエル、色彩と質感を与える第二ヴァイオリンのロバート、深みを添えるヴィオラのレイチェル、そして年長者でメンバー同士を固く結び付けるチェロのピーターで構成されており、まさに完璧なバランスを保っていました。しかしピーターがパーキンソン病と診断され、引退を申し出たことで、そのバランスはいとも簡単に崩れてしまいます。嫉妬やライバル意識が生み出す家庭内不和、許されない恋…事態はこれでもかというほど混迷していき、もはや収拾がつかないことに。それでも、演奏会の日は刻一刻と近づいてきます。

彼らが奏でるベートーヴェンの傑作≪弦楽四重奏曲第14番≫は、ベートーヴェンが亡くなる半年前に完成させた楽曲であり、芸術性に優れた名曲として知られています。最大の特徴は、全7楽章から成るとても長い楽曲でありながら、楽章の間に休みを入れずに演奏するという画期的な曲であること。途中で楽器のチューニングを行えないため、音色が徐々にゆがんでいくことは避けられません。ずれていく音程の中で調和を探りながら演奏していく様子は、まさに長い年月をかけて少しずつゆがんでいってしまった彼らの人間模様そのもの。そして、パーキンソン病の症状が進み、徐々に指の自由を奪われていくピーターの姿は、音楽家として命同然の聴力を奪われていったベートーヴェンの人生にも重なります。 そして演奏会当日、“25年目の弦楽四重奏”はついに“ある結末”を迎えることに。それはすっきりしないようでいて、納得のいく幕引き。必要以上に白黒つけないことで、「人生とはこういうものだなあ」という余韻をもたらします。

魅惑のニューヨークで小粋なクラシック体験

本作の舞台はアメリカのニューヨーク。クライマックスで≪弦楽四重奏曲第14番≫が演奏されたのは、音楽の殿堂「カーネギーホール」です。“鉄鋼王”と称されたアンドリュー・カーネギーにより建設され1981年に開館しました。設計を担当したのはウィリアム・タットヒルで、れんがを積み上げて造られた重厚感のある外観が印象的です。音響へのこだわりには特筆すべき点があり、ホール内の装飾を排除しドーム型の天井にすることで、どの場所からも響きのよい美しい音色が聞けるよう設計されています。コンサートを鑑賞する以外に、10月~6月の期間にはホールの公式ガイドツアーも行われており、約1時間のツアーに参加すると、ホールにまつわる説明を聞きながらじっくりと館内を回ることができます。

そのほか、ニューヨークでクラシック音楽を楽しむのであれば「リンカーンセンター」に足を運びましょう。ニューヨーク・フィルハーモニックの本拠地である「デイヴィッド・ゲフィン・ホール」や、アメリカ随一のオペラハウスである「メトロポリタン・オペラ」、そしてニューヨーク・シティ・バレエの本拠地である「デイヴィッド・H・コーク・シアター」等が集結した、まさにニューヨークを代表する総合芸術施設です。チケットは各劇場のホームページから取ることができますが、人気の演目は早々に完売してしまうので、発売日をチェックして計画的に取得してください。
ちなみに、世界トップクラスの才能が集まるジュリアード音楽院もここに位置しており、運がよければ広場にて行われている在学生の演奏に遭遇することも。また、舞台芸術に特化した州立図書館もあり、過去のオペラ作品などのDVDを借りたり、視聴したりすることもできるので、もしチケットを取れなかった場合でも十分楽しむことができるスポットです。

  • カーネギーホール
  • リンカーン・センター
  • デイヴィッド・H・コーク・シアターと
    メトロポリタン・オペラ
  • ジュリアード音楽院
  • ニューヨーク州立図書館
  • ニューヨーク州立図書館

本場のブロードウェイ・ミュージカルを堪能

  • ブロードウェイ
  • ブロードウェイ
  • タイムズ・スクエア

ニューヨークといえば、ブロードウェイ・ミュージカルも外すことはできません。大迫力のダンスや華やかな演出などは現代のミュージカルならでは。元々の起源は、17世紀に人気を誇った「オペラ・ブッファ(喜劇のオペラ)」です。ウィーンでは「オペレッタ」として発展していった一方、アメリカにも「コミック・オペラ」として広がり、次第に現代のミュージカルの形に変化していきました。

なお、ブロードウェイとは、マンハッタンを縦断するように走る道のこと。1880年、ブロードウェイと41丁目の交差点にメトロポリタン・オペラが建てられたことをきっかけに、周辺には次々と劇場が建ち、一帯が“ブロードウェイ”の通称で親しまれるようになりました。

その劇場数は40にも上り、「オペラ座の怪人」「ライオンキング」「シカゴ」など安定した人気を誇る演目だけでなく、「アナと雪の女王」「ハリーポッターと呪いの子」のような近年の人気作品も上演されています。劇場によって上演作品が違うため、連日さまざまな劇場に通って複数の作品を楽しむ人も少なくありません。

昼にメトロポリタン・オペラでオペラ鑑賞、夜はブロードウェイでミュージカル鑑賞などという、ぜいたくな時間の使い方も実現してしまうニューヨークの旅。さまざまな文化が集まり、あちこちでドラマが生まれるアメリカならではの、刺激的な旅を存分に楽しんでください。

現地を訪ねたら見逃せない、
みどころと名物

自由の女神

エンパイア・ステート・ビル

ブルックリン・ブリッジ

セントラル・パーク

メトロポリタン美術館

ロックフェラー・センター

フィフス・アヴェニュー

グッゲンハイム美術館

ハドソン・ヤード

グランド・セントラル・ステーション

ウォール・ストリート

ニューヨークの歌劇場/コンサートホール/オーケストラ

都市名 歌劇場/コンサートホール/オーケストラ
ニューヨーク

メトロポリタン歌劇場
The Metropolitan Opera

ニューヨーク、クラッシック音楽のメッカ、リンカーンセンター。
その中心に堂々と鎮座する、メトロポリタンオペラハウス、愛称メット。
世界3大歌劇場の1つに挙げられ、そのキャパシティは世界最大3800席。
素晴らしいファサードから見え隠れするシャガールのタペストリーが、一層格式高いものに見せている… もっと見る

特集

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ニューヨーク・フィル
New York Philharmonic

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La Monnaie

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