マチェラータ 《スフェリステーリオ野外劇場》(イタリア)
車窓に、夏に煌く紺碧のアドリア海の残像を留めて、バスは内陸へと入っていきます。なだらかにどこまでも続く空と、緑と土色にまだらに彩られた丘、そのところどころに、思い出したようにぽつん、ぽつんと、教会の塔と、それを取り囲む茶色のレンガ作りの集落が現れては消えていきます。
典型的なイタリアの田舎の風景が広がる、時間が止まってしまったような街道。そんな道を小一時間も走ると、マルケ県の県都、マチェラータの街に着きます。
今も城壁に囲まれた旧市街地は、石畳と16世紀から18世紀に建てられた建築物を数多く残し、生活の匂いが色濃く漂う街をそぞろ歩けば、まるで中世のイタリアの街中にタイムスリップしたかのような錯覚さえ覚えます。
この街で、夏になると、世界のオペラファンが注目する野外オペラが催されます。(イタリアのひとは、きっと好きなんですね。野外オペラが。)
会場は、スフェリステーリオ野外劇場。 この舌を噛みそうな名前の劇場は、前の2回でご紹介したヴェローナやローマのようなローマ時代の遺跡ではありません。 中世、この地で大変人気のあったスポーツ“Disfida del Bracciale”(腕に木製の籠手を付けて腕と手首を守り、この籠手を使って皮製のボールを打つ競技) の競技場を、夏のオペラ劇場にしつらえたのです。
収容人員は7,000人、街の城壁をステージの背面に充て、横に長く、縦に短いカマボコのような、ちょっと他にないワイド画面のようなステージになる劇場です。
中世の街の中世の劇場で、中世に作曲されたオペラを観る。これはまたこれで、趣があります。
オペラの前には、街の居酒屋 “オステリーア” で、地元のパスタ料理“ヴィンチズグラッシ” や腸詰サラミ“チャウスコーロ”をつまみにしてスプマンテ(発泡ワイン)をいただく、というのもよろしいですね。
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